【BUBKA7月号】なんてったってキヨハラ 第10回「好景気ニッポンの顔」

「学校をサボって買いに行ってはならない!」

 都教委は事前にそんな異例の指導をした。1988年(昭和63年)2月10日、豊丸の新作AV……じゃなくて『ドラゴンクエスト―――そして伝説へ…』が発売されたのである。この日、東京池袋ビックカメラ前には徹夜組も含め約1万人が並び、午前10時の開店時には約1キロの列ができたと『サンデー毎日』は報じている。定価5900円のファミコンソフトは、なんと30分たらずで全国の100万本が完売。都内では学校をサボって並び補導された小中高生が283人も出て、街では小学生が買ったばかりのソフトを奪われる〝ドラクエカツアゲ〞もニュースになった。

 同じ頃、プロ野球界の話題を独占していたのが、前年秋のドラフトでヤクルトから1位指名を受けた長嶋茂雄の息子・一茂である。立教大4年のジュニアは「卒論の下書きは終わりました。先輩の丸写しですけどねえ〜。ギャハッハ」なんて呑気に笑い飛ばす一方で、マスコミの要望に答え、自宅近くの喫茶店で卒論の勉強をしているポーズをとったり、多摩川の土手を走っているふりをして撮影に協力したという。さすが、ミスターのDNAを継ぐ男。その様子をリポートする『週刊現代』同号で、「チャンコの中身で辞めるほどバカじゃないヨ」と言いつつ「おかずは、私が作り直してね……。それで若い衆は横綱が作ったもんはうまいですなんて感心しているんです。横綱にメシ作らせる部屋なんて他にありますか」なんつってわけの分からない主張を3時間も繰り広げた、元横綱・双羽黒こと北尾光司よりよっぽど大人の対応を見せている。若い衆をモデルガンで撃ったり、部屋のおカミさんを突き飛ばした件については、「オレ……私が本当に暴れちゃったら死ぬのが五人や六人じゃ済みませんよ」と苦しい弁解をしつつ、大相撲廃業後は「プロレスなんて絶対行きませんよ。だけど、何億円も積まれちゃったら、心が揺らぐなあ(爆笑)」なんて各業界をナチュラルに敵に回す24歳の元横綱であった。


――インタビューの続きは絶賛発売中のBUBKA7月号にて!


なかみぞ・やすたか(プロ野球死亡遊戯)
1979年埼玉県生まれ。大阪芸術大学映像学科卒。ライター兼デザイナー。2010年10月より開設したブログ『プロ野球死亡遊戯』は現役選手の間でも話題に。『文春野球コラムペナントレース2017』では巨人担当として初代日本一に輝いた。主な著書に『プロ野球死亡遊戯』(文春文庫)、『ボス、俺を使ってくれないか?』(白泉社)、『原辰徳に憧れて-ビッグベイビーズのタツノリ30年愛-』(白夜書房)、『令和の巨人軍』(新潮新書)などがある。