【BUBKA8月号】思考家・佐々木敦的 EMPiRE論
5月末、佐々木敦の「EMPiREにハマってしまいました。」というツイートを発見したことから立ち上がった本企画。ここでは、新曲『IZA!!』から読み取れるEMPiREの新たな仕掛けについて深掘りし、今年1月に行われた国際フォーラムでのライブを観るまでのプロセスを語ってもらった。佐々木敦はなぜここまでEMPiREに魅了されたのか、道筋をたどっていくと彼女たちのアイドルグループとしての完成度の高さが見えてきた。
有能なYouTubeアルゴリズム
――佐々木さんはSeihoプロデュースの『IZA!!』からEMPiREに興味を持ったんですよね。これまでのEMPiREの楽曲はSCRAMBLESが手掛けてきたわけですが、初めて外部のプロデューサーを立てて制作された『IZA!!』に惹かれたということは、きっと仕掛ける側の思惑通りで。
佐々木 大成功だよね(笑)。いつものパターンですが、ある日突然、YouTubeが『IZA!!』を薦めてきたんですよ。BiSHも同じ回路で知って、ハマって、DOMMUNEの特番で本人たちとも会ったし、それ以前にBiSとは多少関係がないわけじゃなかったけど、WACKのことはよく知らなかった。BiSHがいいなと思ったから、当然「WACKどうなってんの?」とか「BiSその後どうなってんの?」ってチェックはしてたんです。でも、なかなか興味を抱くことができなかったんですよね。それに、いわゆるWACK的な独特のやり方、ある種のドキュメント方式みたいなのっていうのもそんなにピンと来てなかった。けど、『IZA!!』が関連動画で出てきたときに、「EMPiREってWACKだっけ?」ぐらいの、すごく遠い距離感で再生して。前にも曲は聴いたことあったけど、ちゃんとはチェックしてなかったから、今こんな感じなんだ、完全ダンスミュージックじゃんって驚いて。で、MVの後に、例の踊ってるだけの動画がアップされたんですよね。
――10時間繰り返しの。
佐々木 ひたすら延々リピートしてるのがアップされて、あれをずっと再生してたら、クラブミュージックにありがちなアディクション的な現象が起こった(笑)。「なんか俺、コレすごい好きかも!?」って、知らないうちに永久に聴いちゃってるパターンにはまっていったわけ。
――佐々木さんが昔、テクノ的な音楽にハマった瞬間というのがあったわけじゃないですか。あの動画にもそれに近いものがあったのかもしれない?
佐々木 そうかもしれない。いちばん最初はテクノとかハウスがすごい苦手だった。なぜならずっと繰り返してるから。変拍子大好き人間なので、テクノって変拍子じゃないじゃん。当たり前だけど。ああいうのって反復することがすごい大きくて、ひたすらリピートしてるうちに自分の聴覚や体がカスタマイズされていく感じがあった。今から30年ぐらい前のことだけど(笑)。『IZA!!』もそれに近いのかも。最初に聴いた時は、もちろん良い曲だとは思ったけど、少なくともそこから歌ってる人たちへの興味へと移行してく感じはなかった。だけど、あの10時間のやつは、俺をハメるために作られたんじゃないのかなっていうぐらいで(笑)、一時期、仕事しながらずっと再生してた。最初はメンバーの顔と名前も一致してなかった。でも、あまりにも見てるから、さすがにこの人が誰で、ということを知りたいと思って、そしたら一気にハマってしまった。
――インタビューの続きは絶賛発売中のBUBKA8月号にて!
ささき・あつし
元批評家の思考家。音楽レーベルHEADZ主宰。文学ムック『ことばと』編集長。30年以上にわたり芸術文化の複数のジャンルで執筆活動を行ってきた。近著として『批評王̶終わりなき思考のレッスン』(工作舎)、『これは小説ではない』(新潮社)、『それを小説と呼ぶ』(講談社)など。
EMPiRE(えんぱいあ)
2018年4月、1st アルバム『THE EMPiRE STRiKES START!!』をカセットテープでリリースしデビュー。ダンスミュージックとエモーショナルが融合したサウンド、激しいダンスパフォーマンスと一体感と多幸感溢れるライブが特徴。5月12日には両A面シングル『HON- NO /IZA!!』をリリース。2021年11月23日には、グループ最大規模となるワンマン公演「EMPiRE'S SUPER ULTRA SPECTACULAR SHOW」を幕張メッセイベントホールで開催が決定!!
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