【BUBKA4月号】エンターテインメントの行方 #07 太田敦之

ソーシャルディスタンス、リモート、フルフレックス……コロナが日本社会に与えた変化は枚挙にいとまがない。では、エンタメの現場はどうだろうか? 当企画では、さまざまなエンタメの識者に〝ウィズコロナのエンタメ〞がどう変わりつつあるかを取材。今回は、スマホを介してオンライン上で特典会を体験できるサービス『チェキチャ!』を手掛けるIBGメディア株式会社サービスデザインプロデューサーの太田敦之氏に話を聞いた。

想像を超える拒否反応

――『チェキチャ!』は、オンライン上でタレントと1対1で特典会のような体験ができるサービスです。タレントに対して、ビデオ形式でトークやチャット・スタンプを送ることができたり、遠隔とはいえ2ショット風の写真を撮ることができる。あえて、オンラインで特典会的な体験を提供しようと思った経緯を教えてください。

太田 '19年12月にリリースされた『チェキチャ!』は、構想から約2年かかってローンチされました。当然、コロナが流行することは想定外でしたし、コロナを見通して開発したサービスでもありませんでした。僕は、世の中の当たり前を疑うというか、自問自答することが結構癖でして(笑)。仕事の関係でアイドルのLIVEイベントにお邪魔する機会が結構多かったのですが、そこでぼく個人の感じた疑問が、そもそもの『チェキチャ!』の開発のきっかけでした。プロモーションのためにライブをしている一方で、その後の特典会が主たる収益源になっているイベントに違和感を覚えたんですね。毎週末ほとんど代わり映えしない出演ラインナップやイベント内容に対して、特典会をするためにライブをしているかのような本末転倒感、それによって運営もアイドル自身も疲弊していく……、そういう状況を目の当たりにして、違うアプローチがあるのではないかと。そもそもエンターテイメントって、サービス業だと思うんですね。ユーザー目線を大切にすることが問われているわけで、例えば飲食店の場合、何度も通っているのに、いつまで経っても名前も覚えてもらえない、変わらない対応をされたら足が遠のくと思います。きちんと足繫く通っただけの体験や価値を提供しないと、他のお店へ行ってしまう。そういう意味では、たしかに特典会というのは常連感を演出しやすい構造ではあるのですが、一方で、都心を中心に行われるため、どうしても客層が固定化してしまう。それって郊外や地方に住む人、お金と時間に余裕がない人にとっては、不公平なことでもある。スマホを持っていれば、時間や場所に関係なく音楽やライブ映像を楽しむことができるのに、なぜ特典会だけはリアルしかないのか? その当たり前をぶっ壊したかった(笑)。

――とは言え、特典会は実際に会えるからこそ付加価値がある。オンラインでやるというのはかなりの冒険です。

太田 リリースした当初、ハレーションが起きることは覚悟していたのですが、Twitterを覗くと、「オンラインでやって何が楽しいんだ!」などなど我々の想像をはるかに超える拒否反応の数でした(笑)。実は、構想当初はライブ配信・視聴を行えるストリーミングサービスを開発した方がいいのではないか? という声が、社内からもありました。でも、僕は既に世の中にあるサービスをどうしても作りたくなかった。一対多のサービスはすでにあるのだから、誰もやってない一対一のサービスを作りたかったんですよね。


ーーインタビューの続きは絶賛発売中のBUBKA4月号にて!


Nobuyuki Ota
過去にはウェディングプロデュースやリラクゼーションスパの立ち上げなどのサービス業に携わり、現在IBGメディア株式会社にて自社サービス全般の開発プロデューサーとして多岐にわたる自社プロダクト開発に従事している。