【BUBKA6月号】なんてったってキヨハラ 第9回「涙が止まらへん」

 大ボケのひょうきんビッグスター。天才四番打者だ。

 シンプルかつ無敵。それがコミックス第1巻掲載のキヨハラくん紹介文である。1987年(昭和62年)初夏、『かっとばせ!キヨハラくん』(河合じゅんじ)の連載が始まった。作中で「日本プロ野球界イチのプレイボーイ」ワタナベ、「まんまるの目。キヨハラ・ワタナベとで三バカ大将」クドーちゃんら西部ライアンズの愉快な仲間たちがやりたい放題の大暴走。主人公のキヨハラくんは話題の新助っ人アホーナーを「たんなるデブですね!ギャハハッ」なんて笑い飛ばし、打撃不振で悪霊おはらいをしたら、取り憑いていた宿命のライバル東京カイアンツのクワタくんが背番号3の尻から飛び出す。ついに『高橋名人物語』や『つるピカハゲ丸』、さらには『ビックリマン』といった小学生の流行最先端の看板作品が並ぶコロコロコミックスで、プロ野球選手を主役にした漫画が登場したわけだ。そりゃあもう〝あの頃の清原和博〞は僕らのアイドルだった。

「ナベさんはいいなぁ。フライデーされるにしてもいつも清純派。ボクはいつでも肉体派だもん」

 いやー少年漫画なのにキヨハラくんは大胆だ……ってこっちは本物のキヨマーのリアル発言だよ! チャンコ番でネギを切ったままの手で、あわてて関取に手ぬぐいを手渡したもんだから、関取の顔が臭くなっちゃって「バカヤロー、手を洗ってこい」なんて怒鳴られたもんです……ってこれは北尾光司の付き人時代のズンドコエピソードじゃねえか!まさに漫画のような新人類たちは大胆に80年代をサバイブしていた。

『週刊ポスト』によると、桑田真澄から歓喜の一撃を甲子園の左翼席へ放ったオールスター戦後、西武の北海道遠征で食事に出かけた夜の出来事だ。昨年の紅白歌合戦の審査員で一緒だった『美味しんぼ』原作者・雁屋哲と札幌でばったり出くわし、物怖じせずに素朴な質問を繰り出す、キヨマーじゃなく〝キキマー〞。試合前にスープだけだと腹が減ってしまうが、しっかり食事をして満腹になってもプレーに影響はないかと聞くと、雁屋氏はテニス界の女王・ナブラチロワの食事コンサルタントだったロバート・ハースの〝食べて勝つ〞を例に出して、「炭水化物はエネルギー源になるから食べても大丈夫」と説明した。力強くうなずくキヨマー。……なんだけど、あとでそっと同行者にこう聞いた。

「あのー、炭水化物って何や?」


――インタビューの続きは絶賛発売中のBUBKA6月号にて!


なかみぞ・やすたか(プロ野球死亡遊戯)
1979年埼玉県生まれ。大阪芸術大学映像学科卒。ライター兼デザイナー。2010年10月より開設したブログ『プロ野球死亡遊戯』は現役選手の間でも話題に。『文春野球コラムペナントレース2017』では巨人担当として初代日本一に輝いた。主な著書に『プロ野球死亡遊戯』(文春文庫)、『ボス、俺を使ってくれないか?』(白泉社)、『原辰徳に憧れて-ビッグベイビーズのタツノリ30年愛-』(白夜書房)、『令和の巨人軍』(新潮新書)などがある。