【BUBKA 3月号】話題の著者に直撃取材!! BOOK RETURN 第4回 田崎健太「全身芸人」
ブブカがゲキ推しする“読んでほしい本”、その著者に毎月インタビューする。第四回は、『全身芸人』を上梓したノンフィクション作家の田崎健太氏が登場。戦後の昭和を体験し、身一つで這い上がってきた絶滅危惧種芸人たちを通じて見えてきたものとは!?
一癖も二癖もある取材対象者を取材し続ける、田崎流の取材術も見逃すなかれ――。
戦争をくぐり抜けた芸人たち
――これまで野球選手、プロレスラーなど多岐にわたる人物を掘り下げてきた田崎さんですが、今回は芸人に焦点を当てています。改めて、動機を教えてください。
田崎 生まれが京都花月のある京都なので、子どもの頃からお笑いが身近な存在でした。高校生のときは島田紳助さんのラジオを熱心に聞いてましたね。ただ、身近ではあったんですが、芸人というのは、近寄りがたい怖い存在だとも思っていました。笑わせているのだけれど、自分の眼は笑っていない。そんな芸人をいつか書いてみたいと思っていたんですよね。
――『全身芸人』に登場する芸人は、古き良き時代の芸人ばかりです。仰るように、どこか狂気をはらんでいて、近寄りがたい雰囲気を持っている方々ばかり。
田崎 僕は昨年、50歳になりました。現時点では肉体的、精神的な衰えを感じることはありません。ただ、遠くない将来、下り坂に入っていくのは間違いない。だからこそ表現者の先達である、芸人たちがどんな風に〝老い〞と向き合っているのか、興味があった。狂気と老いを同時に抱え込むような芸人、前時代を生きてきた芸事の本質を知る、ややもすれば絶滅危惧種の芸人を掘り下げることで、いろいろな発見があるのではないかと。
――ラインナップが、月亭可朝、松鶴家千とせ、毒蝮三太夫、世志凡太・浅香光代、こまどり姉妹……濃すぎる面子です(笑)。
田崎 可朝さんは、70歳を過ぎてストーカー行為に及んだ。純粋にどんな人なんだろうという興味もありました(笑)。人を笑わせるには、センスや経験、度胸の他、瞬発力と体力が必要だと思うんです。ところが、老いが加速するにつれ、この二つは必ず衰えていく。我々にとっても対岸の火事ではない。今なお、現役で舞台に立ち続けるレジェンド芸人だからこそ、〝学び〞がある。
――実際に、一癖も二癖もある絶滅危惧種の芸人たちに取材してみて、田崎さんはどのような印象を持ちましたか?
田崎 本にも書いたように可朝さんは、最後まで新しい商売を始めることを考えていた。松鶴家千とせさんは、奥さんの介護をしながら興行のプロデュースも手掛けている。こまどり姉妹は、若手芸人のように今でも営業に精を出している。取材を通じて痛感したことは、戦争を経験しているからなのか、生命力がとんでもないということ。人間としての分厚さがすさまじい。
――たしかに『全身芸人』を読むと、それぞれ戦争という体験が一つの大きなトピックになってることが分かります。
田崎 この企画を始めた当初は、これほど戦争について書くとは思ってなかったんですよ。ところが、密着して、何度も取材をしていくと、彼らの原体験に戦争という存在が大きく横たわっていた。戦中、戦後の苛烈さや貧しさから這い上がってきた人間的な力強さ……生命力やしたたかさ。苦しい時代が必要というわけではありませんが、人間が分厚くなるためには、必ずそういった要因があるということを、改めて気が付かされた取材でした。
――インタビューの続きは絶賛発売中のBUBKA 3月号にて!
たざき・けんた
1968年京都市生まれ。ノンフィクション作家。早稲田大学法学部卒業後、小学館に入社。『週刊ポスト』編集部などを経て、1999年末に退社。著書に『偶然完全 勝新太郎伝』(講談社)、『球童 伊良部秀輝伝』(講談社 ミズノスポーツライター賞優秀賞)、『真説・長州力 1951-2018』(集英社)、『真説・佐山サトル』(集英社インターナショナル)、『ドラガイ』(カンゼン)など。
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