【BUBKA 9月号】欅共和国2019ライブレポート「共同幻想国家に降り注ぐ恵みの雨と210tの放水」
欅坂46にとってすっかり夏の恒例行事と化したお祭りは、3日間ともあいにくの雨に見舞われた。
しかし、そんな悪天候すらも演出の一部かのように思えてくるストーリー仕立てのセットリストに加え、昨年比5倍の放水量、さらには地の利を活かしたMVの再現など、昨年からパワーアップした「欅共和国2019」を振り返る。
5倍の聖水
東京も雨だったが、富士急ハイランド・コニファーフォレストもやはり雨だった。
この日は「欅共和国2019」の3日目。前々日も前日も雨だったようだが、情報を遮断したままこの日を迎えたから、詳しいことはよくわからない。もちろんセットリストも知らない。
観衆は1万6000人。都心から車で1時間半、電車だと2時間半かかるこの地によくぞこれだけ集まった。いや、もっと遠方からやってきたファンもいるに決まっている。それだけの価値がこの「共和国」にはあるということだ。距離は行かない理由にならない。好きならば行く。観たいから行く。ただそれだけの話だ。
メディア関係者は客席の後ろの高台に通された。ステージを見下ろすと、巨大な船をかたどったセットになっている。上部にはフラッグがはためき、宴の開始を今か今かと待っている。
定刻から15分遅れでスタート。メインステージにマーチングバンドが登場した後、尾関梨香だけが登壇。バケツに入った水をぶちまけると、モップやほうきを持った2期生が音に合わせてデッキを掃除する。尾関はバケツの蓋をシンバルのように扱う。体や道具を使ったパフォーマンス「ストンプ」だ。
オープニングで何をするのか。それは「共和国」最大の見せ場のひとつだ。昨年は「集団行動」だった。ただきれいに歩くだけでなく、古代ローマ感を取り入れることで、オリジナル性と力強さを見せつけた。今年はファニーさを前面に出した。いつの間にかステージには1期生も姿を現し、手旗信号のパートに移っている。キャプテンハットをかぶった平手友梨奈が登場すると、ひときわ大きな歓声が集まる。平手がセンターに収まると、現在の欅坂46のフォーメーションが完成した。正装したメンバーがステージに勢ぞろいすると、やはりその凛々しさは数多のグループの中では群を抜いている。観客はこれを観たくて、遠隔地にまで足を運んでいるのだ。「欅共和国」とは、ファンの憧れが生み出した共同幻想国家だ。
白ブラウスに紺のスカートへと着替えを終えたメンバーは、『世界には愛しかない』を披露。『手を繋いで帰ろうか』では花道や櫓に出て、ファンに放水。去年の5倍の水を使った聖水攻撃を浴びようと、ファンは両手を広げて待ちわびる。映画『マッドマックス 怒りのデス・ロード』でイモータン・ジョーを敬愛するウォーボーイズを思い出した。
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