【BUBKA 3月号】話題の著者に直撃取材! 第16回 町田康 『しらふで生きる 大酒飲みの決断』

BUBKAがゲキ推しする“読んでほしい本”、その著者にインタビューする当企画。第16回は、『しらふで生きる 大酒飲みの決断』の著者・町田康氏が登場。30 年間ほぼ毎日酒を飲み続けていた酒を愛する文士が、ある日突然、断酒を決意。パンクロッカーであり、文豪である著者が語る、酒との付き合い方。人生には、“くだらんこと”が必要だ。

写真=Aki Yoshikawa

4年間の禁酒

――「お酒をなぜやめたのですか?」との問いに対して、「気が狂っているからやめられた」と書かれています。この言葉でしか説明がつかない感覚だったのでしょうか?

町田 何でもそうなんですけど、自分が分かっていることを人に説明するのは、あまり面白くないんですよ。例えば、「人を殺してはいけません」みたいなことを書いてある本を見ると、「そらそやろ」としか思わない。当たり前だから面白くない。本当に考えていることって、案外、考えながらやっている。だから、「酒をやめました」と伝えて、「なんで?」と問われたとき、本人も書いているときはよく分かっていない。自分としては、”分かったこと””(自分にとって)自明なこと”を「こうですよ」と人に教えることに興味がなかったんですね。自分でも分からない問題について、書きながら考えていくことが、自分にとって重要なことだったんです。「断酒の話を書きませんか?」と言われたとき、自分の人生にとって酒の存在は結構重要なことだったので、「書くことはたくさんあるので書かせてください」となったんですけど、書き終えてしばらく経った今は、「なんであんなに飲んでたんやろな」と思うくらいですね。

――今も、町田さんの中で”なぜ断酒をしたのか”は明らかになっていない?

町田 ただし、書くことによって明らかになることもあるんですよね。人間、「なんでそんなことしたの?」と言われても、分からないことが多々あると思うんですけど、書いてみると、「俺はこういうことを考えていたのか」と理解できることがある。分かったとは言わないけども、「なるほど、自分はこういうときにこういうことを思っていたんだな」ということを、本の中で書きました。ハウツー本のように実用的な断酒の話ではないけど、かえって実用的ではない内容の方が、逆に使い勝手はいいのでは?とも思っています。お金持ちが金を儲ける方法をハウツーとして伝えても、読んだ人は条件が違うんだから、お金持ちにはなれないわけで。

――飲酒を懐かしんだり、ちょっと飲みたくなった……なんてことはないのでしょうか?

町田 今はまったくないですね。人間は習慣の生き物だと思うんですけど、飲んでいたのも習慣、飲まなくなるのも習慣。人間って慣れてくるんですね。10年前、20年前に当たり前にやっていたことを、「今やれ」と言われても、「何でそんな事やってたんだろう」って不思議な気持ちになることが、皆さんにもあると思います。お酒もそういうもんだと思うんですよね。


――インタビュ―の続きは絶賛発売中のBUBKA3月号にて!


まちだ こう
1962年大阪府生まれ。町田町蔵の名で歌手活動を始め、1981年パンクバンド「INU」の『メシ喰うな!』でレコードデビュー。俳優としても活躍。1996年に初小説『くっすん大黒』を発表、翌年ドゥマゴ文学賞、野間文芸新人賞を受賞。その後、2000年『きれぎれ』で芥川賞、2001年『土間の四十八滝』で萩原朔太郎賞、2002年『権現の踊り子』で川端康成文学賞など、数々の文学賞を受賞。小説の他、随筆の著書も多数。