【BUBKA5月号】新型コロナウイルスに負けるな! プロ野球開幕直前特集 里崎智也「正解なき野球論」

プロ野球OBのユーチューブではダントツの再生数を誇る『里崎チャンネル』。歯に衣着せないストレートなモノ言いで人気を博す里崎智也氏に、巷で賛否両論を巻き起こす球界の諸問題について聞いてみた。

選ぶ側の意識

――新型コロナウイルスの影響で史上初の中止が決まってしまった春センバツ。もし予定通りに開催されていれば、「球数制限」が本格的に導入される大会でもありました。

里崎 まぁ、「動きますよ」という姿勢を高野連がみせたこと自体は評価したいですけど、僕はそもそも「そんなもの要らない」と言ってきた立場なので、効果については懐疑的ではあるんです。だって、柱とされている「投手1人につき1週間で500球以内」、「3連投の禁止」、「週1日以上の休み」って、現時点でも抵触する選手は、ほぼ皆無。仮に1試合150球ずつで3連投しても、まだ50球も投げられるのに、それをあえて言う必要あるんかなって。

――とはいえ先日も、未成年の過度な投げ込みに異議を唱えたダルビッシュ有投手のツイッターが反響を呼びました。「練習のさせすぎ」を問題視する声も多いですよね。

里崎 それはもう簡単ですよ。選ぶほうがしっかり見極めればいいだけのこと。どっちが正しいかなんて誰にもわからないんですから、指導方法をひと括りに「いまの時代はこっち!」と決める必要性を、そもそも僕は感じません。野球を勉強に置き換えたらわかるじゃないですか。同じ東大に入るにしても、ガンガン塾に通って朝から晩まで1日十何時間もやる子がいれば、学校の授業と自分でする勉強だけで事足りる子もいる。それって、どっちも正解ですよね?(笑)。野球も同じ。目標とするゴールがあるなら、あとはそこにどう結びつけるか。最終的な選択権は親なり本人にあるんだから。

――「里崎チャンネル」や単行本では、ゴリゴリにやらせるのか、健康第一でやるのかを学校や少年野球のチームが明確に開示するべき、とおっしゃっていましたね。

里崎 そう思いません? 健康第一派の人は「昔とは時代が違う」ってよく言いますけど、じゃあ、なんでもとから選択肢も多いはずの都会で、世田谷西や東練馬みたいな強豪シニアが100人を超える大所帯になってるんですか?ってことなんです。学校や地域単位で飛びぬけて能力の高い子たちが「お前やったらプロ行けるんちゃうか」って背中を押されてその気になるのが「昭和」やとしたら、親世代が子どもをプロ野球選手にすること自体を目的にしちゃってるのが「平成」以降。これはスポーツでも勉強でもあらゆることに言えますけど、「昔とは違う」のはむしろ、選ぶ側の意識のほうなんちゃうかな、と。結局それが近道やと思ってるから、ゴリゴリ派がいまも人気を集めることになるわけでね。

――「練習のさせすぎ」がいいか悪いかではなく、世間の需要と供給のバランスがそうさせてる、と。

里崎 そうそう。洋服のブランドでも街の飲食店でも、なんでもそうですけど、お店が存続できるのは、消費者の側が「それが欲しい」、「そこがいい」と思ってるから。どんなにダサかろうと、人が気に入って着ている服にわざわざ「それダサいですね」って言う必要はないですし、本当にマズい飲食店なら、なんにもしなくたってそのうち淘汰されていく。なのに、なんで野球のことにだけそんなに目くじらを立てるのかな、って思います。「健康第一がいい」ってみんなが思えば、ゴリゴリ派だって自然に減っていきますよ。


――インタビュ―の続きは絶賛発売中のBUBKA5月号にて!


さとざき・ともや
1976年、徳島県生まれ。鳴門工高(現・鳴門渦潮高)、帝京大を経て、98年のドラフト2位で千葉ロッテマリーンズを逆指名。05年にチームの日本一に貢献。翌年には第一回WBCに日本代表の正捕手として世界一に導き、ベストナインも獲得。14年に引退後は野球解説者として、様々なメディアで活躍中。