【BUBKA9月号】『地下アイドルの法律相談』刊行記念対談 姫乃たま×吉田豪

本来、夢を与える存在であるアイドルだが、時には目を覆いたくなるようなトラブルが発生し、過酷な現実に直面することもしばしば。表舞台で輝ける日を待ちながら、地道に活動するいわゆる「地下アイドル」にとってはより大きな問題だ。そんな彼女たち、家族、そして運営必読の一冊がこの度刊行された。本著に深く関わった姫乃たまと、地下アイドルの良き相談相手である吉田豪が地下アイドルについて語ります!

アイドルと運営の関係

――発売されたばかりの『地下アイドルの法律相談』、帯には豪さんが普段から言っている「地下アイドル運営の8割は信用できない」という一文が記されてますが……。

吉田 最近は9割に修正しつつありますね。アイドル側からもよく「8割じゃなくて9割です!」と言われるので。

姫乃 ああ……。そして「信用できない」にもいろんな意味がありますよね。

吉田 「ビジネス的に信用できない」もあるし「音楽的に」「人間的に」もある。地下アイドル運営でその全てが信用できるところはまずなくて、そのうちひとつでも信用出来るところがあればラッキーですよ。ひどいところだと全部悪い。メジャーだと2個良かったりする。

姫乃 メジャーだと2個!(笑)  

吉田 地下アイドルは誰でもなれるんだけど、「その中であなたは何を重視しますか?」ってよく言ってますね。

――相性もあるし「この事務所は100%信用出来る」とは言えないですよね。

吉田 アイドル志望の子から「○○を受けたいんですけど、あそこは信用出来ますか?」とか聞かれるんだけど、そんなの保証なんか出来るわけないじゃないですか(笑)。

姫乃 運営の人、会ってみると皆いい人だったりしますしね。その後、問題になって「ええ、あの人が!」になる。

吉田 ただ、よく言うのが運営には「お金好きな運営」と「アイドル好きな運営」「音楽好きな運営」の3種類いると思っていて、その中だとお金好きが叩かれがちだけど、ビジネスとしてメンバーにも還元できてるぶんにはそれは悪いことではない。だいたい問題起こすのはアイドル好きの運営ですよね。「オタクの気持ちがわかる」って客からは評価されるけど、最終的にゴタゴタ起こしがちなのはそういうところ。

姫乃 運営になりたいアイドルファンっているんですよね。昔は「ヲタッフ」という単語がありましたけど、「ネチケット」と共に消えていった……。

――現場で盛り上がるコツは知っていても、ビジネスを知ってるとは限らない。

吉田 ヲタクが運営になると、やっぱりヲタクだからメンバーのこと好きになっちゃって、メンバーと自分を同じ部屋にしたり、携帯もぜんぶ見るとか運営がメンバーのストーカーになっていく、なんて話もありましたよね。

姫乃 ファン人気や実力を客観視せずに自分の好きな子を推しちゃったりしますよね。

吉田 個人的にはもともと音楽が好きでアイドルを使って好きな曲をやりたいって運営が好きで、目的がそっちにあるとそれほど問題も起こさないんですよね。ゆるめるモ!の田家さんとかAqbiRec(BELLRING少女ハート・NILKLY・MIGMA SHELTERなど)の田中さんとか。

姫乃 あー、言われてみればたしかにそうです。わたしの元担当編集がまさにいまなんちゃらアイドルってグループを運営していて、彼は元々自分の作詞した曲を広めるためにどうすればいいのかって考えてアイドル始めたんです。いろいろあったけどグループは円満だし、コロナ禍でも頑張ってます。


ーー対談の続きは絶賛発売中のBUBUKA9月号にて!


ひめの・たま
1993年、東京都生まれ。10年間の地下アイドル活動を経て、2019年にメジャーデビュー。同年4月に地下アイドルの看板を下ろし、文筆業を中心にトークイベントに数多く出演。著書に『潜行~地下アイドルの人に言えない生活』(サイゾー)『職業としての地下アイドル』(朝日新聞出版)『周縁漫画界 漫画の世界で生きる14人のインタビュー集』(KADOKAWA)など。