【BUBKA10月号】 話題の著者に直撃取材! 第22回 中川淳一郎 「意識の低い自炊のすすめ」

BUBKAがゲキ推しする“読んでほしい本”、その著者にインタビューする当企画。第22回は、『意識の低い自炊のすすめ 巣ごもり時代の命と家計を守るために』の著者である中川淳一郎氏が登場。ネットニュース編集者の第一人者が唱える“料理の権威性の愚かさ”とは!? そして、本日をもってセミリタイアする同氏が掲げる「リタイア界の最若手」としての野望を聞いた。

ミシュランより妻の舌

――本書は、料理にまつわるよく分からない権威性の愚かさを指摘しつつ、実際に中川さんが作る料理のレシピなども公開しています。意外と言っては失礼ですが、ここまで中川さんが料理に詳しいとは思いませんでした。そもそも、なぜここまで料理に関心を持ったのでしょうか?

中川 ケチだからでしょうね(笑)。会社(博報堂)を辞めた2001年当時、俺の年収は60万円でしたから節約をしなければいけなかったんですよ。外食をすると1000円くらいはかかるから、自炊をするしかない。ビールはやめられないから、コンビニやスーパーで缶ビールを買ってきては、毎日のように飲んでいた。となると、健康にも気を遣うようになるから、野菜を含め体に良い自炊を心がける意識が芽生えたんです。

――ですが、その後中川さんはライターとして収入も安定し、ネットニュース編集者の第一人者となります。お金にも余裕ができたと思うのですが、食生活は変わらなかったのですか?

中川 「ミシュランのお店へ行く」というムック本を担当した際に、フランスで三ツ星を誇るレストランの東京店に行ったんですけど、美味しいと思えなかった。結局、「自分の舌次第なんだな」と感じるようになったんですよ。あと、仕事が忙しすぎて、このままではヤバいと思ったんですね。何か趣味的な没頭できるものを見つけなければ――、そう思ったときに「料理をしよう」と。家の近所に「肉のハナマサ」があったので、鶏ガラや豚足、もみじ(鶏足)などを買ってきては、オリジナルのラーメン作りにハマってしまって。毎日ラーメンを作る様子を描いた東海林さだおさんのエッセイがあるんですけど、その気持ちが分かるくらいラーメンを作るのが楽しかったですね。無手勝流でアレンジしては、最高の組み合わせを見つけていく。その過程が面白かった。

――たしかに、この本の中には中川さんの独断と偏見とも言える、〝中川流の食材と調味料のベストマッチング〞などが事細かに綴られています。料理の専門家ではない、門外漢である中川さんだからこその視点が面白いです。

中川 我が家では、俺が書いたような組み合わせで問題ないけど、他の人が見たら「俺の場合は違う。こっちの方が合う!」となるかもしれない。でも、それでいいと思うんですよね。〝料理の権威〞なんてものは、存在しちゃいけない。もし仮に権威とやらがあるのなら、偉いとされる人たちって、あなたのために最高の料理を作ってくれないですよね? だったら、あなた自身とあなたの家族が美味しいと思うものが、最高の権威なんじゃないのって。なんでアンジャッシュの渡部に、「ここのお店は最高です。美味い!」とか言われなきゃいけないんだと。多目的トイレを使用して浮かせたお金で食っただろう高級店の飯を絶賛されても、「うるせー!」としか思えないわけです。


ーーインタビューの続きは絶賛発売中のBUBKA10月号にて!


中川淳一郎
1973年生まれ。東京都立川市出身。大学卒業後、博報堂CC局で企業のPR業務を担当。2001年に退社し、しばらく無職となったあとフリーライターとなり、その後『テレビブロス』のフリー編集者に。企業のPR活動、ライター、雑誌編集などを経て『NEWSポストセブン』など様々なネットニュースサイトの編集者となる。主な著書に、当時主流だったネット礼賛主義を真っ向から否定しベストセラーとなった『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『ネットのバカ』(新潮新書)、『夢、死ね!』(星海社新書)など多数。