【BUBKA2月号】 輝け!BUBKAアワード2020-2021 伊賀大介

弩級のノンフィクションに酔った2020年

今年も一切ハズレなし

 今年もこの一年で読んだ中からオススメしたい本を順不同で紹介しようと思います。

 まず、2020年のベストは、『沢村忠に真空を飛ばせた男』ですね。タイトルにある通りの野口修の評伝なんですけど、500ページ超え、二段組。間違い無しのやつです。野口修に着目した著者の凄さと10年かけて書かれた超力作だと思います。主人公が入れ替わっていく大河ドラマであり、昭和芸能史、東京アンダーワールド的な感じもあり、ボクシング、格闘技の話も全部絡んでいて、それらがすべて繋がっているのだ!!という展開が見事でした。これこそノンフィクションの一番面白いところというか。沢村忠はもちろん、大門節子、五木ひろし、ジュリー、安井かずみ、石井館長、安藤昇にビートたけし……水道橋博士曰く、スターたちの「星座」が絡み合う様があまりに面白過ぎて、睡眠時間を削るしかない!と。格闘技を知らなくても、戦後昭和史として面白く読めると思います。面白いのは間違いないというか、たぶん知らない人でも面白いと思うんですよね。結構な弩級の本として、語り継がれるんじゃないかなと。だからボクシングファンも満足、昭和好きも満足できる。野口修はとんでもない人なんですけど、でも全然よどみがないというか、かっこいい。まあ、ノンフィクションはこうでないと、という本。おそらく野口修の再評価がされると思いますが、そこまで持っていった細田さんの根性にヤラれました。マジで売れて欲しいです。

 年の瀬に発売された『2016年の週刊文春』は、タイトルから最近の文春の話だと思ったんですが、ぜんぜん違って、どうやって文春ができて、各時代の編集長によるカラーがあって、フォーマットを決めた様(さま)とか、このデザイナーさんが「原色美女図鑑」作ったんですよとか、この編集者が和田誠にしろと言ったとか、そういうのが全部書いてあるんですよね。知らない話がたくさんありました。会社内でもみんなで旗をあげたくて頑張っていく姿、もう柳澤さんの必殺技というか、群雄割拠する若者たちの物語を描いていて、めちゃくちゃ熱い。いわゆる「文春砲」とかのミーハーな気持ちで読むと結構泣ける良い話があって。だからほんとに勉強になるし、文春が清濁合わせ持ちつつのああいう雑誌になっていったかが分かります。で、『沢村忠に真空を飛ばせた男』とこの本は若干繋がってるんですよ。だから『沢村忠に真空を飛ばせた男』を読んだ人はこれを読んだ方がいいと思います。


ーーインタビューの続きは絶賛発売中のBUBKA2月号にて!


いが・だいすけ 
1977年、東京都生まれ。22歳でスタイリストとしての活動を開始。映画『ジョゼと虎と魚たち』『モテキ』『バクマン。』『ハード・コア』『おおかみこどもの雨と雪』『宮本から君へ』などの作品を始め、演劇、広告、ミュージシャンなど幅広く活動中。また、音楽や映画、印刷物にも造詣が深いことでも知られる。WEB連載『文春野球コラム ペナントレース2020』の巨人担当として毎週記事をUPしている。