【BUBKA2月号】 『Rの異常な愛情──或る男の日本語ラップについての妄想──』 「ケツメイシの進化(完結編)」

CreepyNutsのMCとして活躍するR-指定が日本語ラップを語り尽くすイベント『Rの異常な愛情 ──或る男の日本語ラップについての妄想──』。9月12日に敢行されたSHOWROOM配信・第2弾はケツメイシ特集! 異常すぎるケツメ愛が炸裂し、番組は怒涛の延長。どれだけ喋り尽くしても2枚目のアルバムまでしかたどり着くことができなかった、ケツメイシの「すごさ」を楽曲を聴きながら感じて下さい!

写真/岡本武志


ジャガー先輩との思い出

――ケツメイシシリーズ、ついに最終章です。

 R 「ケツノポリス2」には、〝人は〞、〝侍ジャポン〞、〝手紙 〜現在〜〞とレゲエテイストの曲を3連続で放り込んでくるパートがあるんですが、内容的にも優しく寄り添ってくれるような、ケツメイシらしいリリックが通底してるんですね。〝人は〞の場合は〈人は悩んで 本当の意味を知る〉っていうRYOさんのヴァースに凝縮されてると思うんですけど、頑張ってる人にも、普通の人にも、ダメ人間にも、どんな人にも寄り添うような歌詞世界がすごいグッと来るんですよね。だから大人になってから聴いても、「優しい〜」って心がほどけるし、どんな状況の自分も肯定できるんじゃないかって思わされるんです。その次の〝侍ジャポン〞は、日本の良さみたいな部分をレゲエテイストで歌っていて。

――〝花鳥風月〞とか、和や日本をテーマにしたアプローチもケツメイシにはあるよね。しかもそれがあまりナショナリスティックにならないバランス感覚もあって。

 R ライミングもすごいんですよ。例えば〈まずは感謝するぜ あんた両親 この国を選んだ ねばんだ日本 きっと 俺らはこれからが出番だ〉。「感謝」「あんた」で短い韻2発、「選んだ」「ねばんだ」で長い韻が2発、そして「日本」「きっと」で短いジャブをパンパン!と打つみたいに、すごいライムの手数なんですけど、それが文章としても必然で繋がってるから、理屈と本能の両方に訴えかけるすごさがあるんやろうなって。でも、そこまで意識して韻の配置なんか考えずにやってるような気もするんですよね。どちらかというと気持ちよさが優先されてると思うし、それがRYOさん、ひいてはケツメイシのラップ巧者としての恐ろしさを感じる部分でもあって。本能で気持ちよくやってるって感じがあるし、だからこそ聴いてる方も楽しく思ってしまうという。そして〝中出し〞というブレイクをはさみまして(笑)。

――ひどいタイトルだな〜。

 R これと同じ現象がラッパ我リヤのアルバムにもあるんですよ。

――〝中トロ〞ね。どちらも言いたいだけという(笑)。

 R 続く〝手紙 〜現在〜〞は、手紙3部作の中でもレゲエアプローチという面白さもありますね。そして、この「優しい流れ」の中で特に好きなのが、9曲目の〝雲の上から〞。これはいろんな解釈ができる曲だと思うんですよね。

――Rくんの解釈は?

 R 最初は「いろんな悩みがあるけど、雲の上から見たら小さいことやから、そこまで悩まずに生きろよ」っていう神様的な目線だと思ったんですよね。でも、もしかしたら亡くなった人が、自分たちが現世にいたときと同じような悩みや苦悩に悪戦苦闘してる人に向けての優しい視点なのかな、とか。それか〈いつもここ広がる雲の上/皆の住む町から遥か遠くで/ただ見守るこの世の行く末/幸せ祈る常に胸の奥で/いつからか自ら雲の上/今日も今日という名の日が暮れ/明日は明日でまた夢見させてくれ/いつまでもいつでも雲の上〉からは、自ら雲の上から、自分が天に召された後のような解釈も出来るなと。


ーー続きは絶賛発売中のBUBKA2月号にて!


R-指定
大阪府出身のラッパー。高1から梅田サイファーに通いバトルやライブ活動を開始。2012年からMCバトル全国大会UMB で3連覇を成し遂げ、「フリースタイルダンジョン」の2代目ラスボスとして活躍。現在はDJ松永とCreepy Nuts として活動中。