【BUBKA3月号】エンターテインメントの行方#06 前沢裕文
ソーシャルディスタンス、リモート、フルフレックス……コロナが日本社会に与えた変化は枚挙にいとまがない。では、エンタメの現場はどうだろうか? 当企画では、さまざまなエンタメの識者に〝ウィズコロナのエンタメ〞がどう変わりつつあるかを取材。今回は、博報堂生活総合研究所の前沢裕文氏に、膨大なデータから見る生活者意識の変化について話を伺った。コロナによって「時間の使い方」は大きく変わった――。
令和の文明開化
――データをもとに、どのような傾向がウィズコロナの中で表れているかをお聞きしたく博報堂生活総合研究所(以後・生活総研)さんにオファーをかけさせていただきました。改めて、生活総研がどんなことをしている部署なのか教えてください。
前沢 博報堂が「生活者発想」を具現化するため、1981年に設立した研究所が生活総研です。人を、単なる消費者としてではなく「生活する主体」という意味でとらえ、その意識と行動を研究しています。1992年から約30年にわたって、生活者(20〜60代の男女)の意識を2年ごとに定点観測していることに加え、コロナ禍による生活者の意識と行動の変化について、昨年4月以降毎月調査を行っています。コロナ禍以降は、とりわけ時間意識の変化が顕著で、〝令和の文明開化〞とも呼べる変化を引き起こしていると思っています。
――文明開化レベルですか!?
前沢 私たちは、明治の文明開化時の太陽暦の導入により「1日24時間」「1週間7日」「日曜日が祝日」といった時間制度に長らく従ってきました。それは、言うなれば〝決められた社会の時間軸に合わせる生活〞だったと言えます。しかし、コロナ禍以前からの調査で、20代を中心に新しい「時間の使い方」が生まれつつあることが見えてきた。スマホをはじめとしたICT(情報通信技術)を駆使して、5分、10分ほどのすきま時間を有効活用したり、スケジュール共有ツールで時間のアレンジを効率化したり、主体的に〝時間をコントロールする〞生活者が増え始めた。新型コロナは、「時間の使い方」が変化している真っ只中に流行し、緊急事態宣言を受けてテレワークや買物のオンライン化といった生活のデジタルシフトが起こりました。明治初期に西洋の文物が流入し、当時の制度・慣習が大きく変わったように、コロナ禍は〝令和の文明開化〞と言っても過言ではないほどに生活を変化させ、いわずもがな「時間の使い方」にも大きな影響を与えていると言えます。
――ということは、コロナの前と後とで、数字的にも生活者の意識に明確な変化が?
前沢 大きな変化として挙げられるのは、「時間の使い方」に関する意識が変わってきている――ということですね。「生活行動が高速化しているか・低速化しているか」という調査を取っているのですが、99年は高速化していると答えた人は全体の64・5%でした。一方、低速化していると答えた人は35・3% 。当時は、情報化社会といった言葉が叫ばれていた時代。情報量も増えていましたから仕事がどんどんスピードアップし、高速化していると実感する人が多かった。そして、コロナ禍前の19年の段階でも64・8%が高速化していると答えているように、20年経ってもさほど変化がなかった。ところが、コロナ禍の20年6月に調査すると、高速化していると答えた人が54・4%、低速化していると答えた人が45・6%に。8月の調査では、高速化している48・6%、低速化している51・4%と逆転してしまった。夏休みの影響もあるかもしれませんが、半数の人が低速化している……つまり、時間に余裕ができたと答えている。
ーーインタビューの続きは絶賛発売中のBUBKA3月号にて!
HIROFUMI MAEZAWA
博報堂生活総合研究所・上席研究員/コピーライター。2000年(株)博報堂入社。コーポレートコミュニケーション局(現PR局)、営業局、クリエイティブ局にて、PR発想を起点とした統合コミュニケーションの企画制作に携わり、2019年から現職。定点観測から見える社会の風景を題材に、『日経クロストレンド』などにも寄稿する。
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