【BUBKA5月号】『Rの異常な愛情── 或る男の日本語ラップに ついての妄想──』 「韻踏合組合の韻革命」(中編)

CreepyNutsのMCとして活躍するR-指定が日本語ラップを語り尽くすイベント『Rの異常な愛情 ──或る男の日本語ラップについての妄想──』。前号から続くテーマは「韻踏合組合」。レペゼン関西のレジェンド集団による、面白くてテクニカル、思わず唸ってしまう「韻」まみれの楽曲を初期作から追って分析します。今回はマイクリレー曲の大クラシック“揃い踏み”もご紹介! ぜひ音源を聴きながらご堪能ください。

写真/岡本武志

脱退組のラップの異様さ

――前回は韻踏合組合の1stアルバム『Volume.0』の途中まで話したので、今回はその続きの話が出来ればと。

R HIDADDYさんと遊戯さんによるHEAD BANGERSの〝BEAT盤〞いきましょうか。HIDAさんの〈縄跳びとビート板とバウンド〉でもわかるように、韻の置き方が変則的で、連想ゲーム的にリリックが展開していくんですね。分かりやすい母音の脚韻みたいな「ここに韻があります」って韻の踏み方ではなくて、口に出してみて近い響きの言葉があったら、脈絡を超えて使うことで、その連鎖によって物語やリリックがつながっていくというか。一方で、この時の遊戯さんは〈能書きタレる俺 書くノートに/濃く描き出される意味の濃度に〉ってケツで踏むスタイルで、10代の頃の遊戯さんはこういうスタイルやったんやなって。そして言葉の発声の仕方がやんちゃですよね。

――HEAD BANGERZは中卒じゃないと入れないって言う逸話があるけどホント?

R これはホントなんですよ。コッペパンで「ENTER」に出た時に、HEAD BANGERSから「Rは学校行ってるん?」って聞かれて、「大学行ってます」言ったら、「あー、それじゃあかんわ」って。それでCOPERUは「僕は中卒で今、定時制に通ってます」って答えたら、「じゃあ学校やめれば間に合うからHEAD BANGERZに入る?」って聞かれてました。

――どういう会話だ(笑)。

R COPERUも誇らしげでしたよ。「中卒やから入れる!」って(笑)。次はNOTABLE MCの〝DOUMO〞を聴きましょう。

――これは説明不要でラップ力の凄さが分かる曲だよね。

R わかりやすく衝撃ですよね。2人とも出だしから子音踏みで展開していくんですけど、それをダジャレっぽく聴かせないっていう、韻の世界に革命を起こしたと思います。AKIRAさんの出だしの〈俺はアメリカ人離れした肉体美〉も最高で。よく「日本人離れしたフロウ」とは言うけども、それって日本人を下に見た前提の言い回しじゃないですか。それを逆手に取って〈俺はアメリカ人離れした肉体美〉っていう。

――要は筋肉のつきづらい、ひょろっとした体をこう表現するかっていう。

R それを〈ん〜何とも良いガタイ(言いがたい)〉って(笑)。あと〈肉体美〉と〈ネクタイピン〉みたいに、「母音で分解してみる」みたいなお勉強的に考えたら絶対に出てこないフレーズも発明ですよね。〈原稿書く〉と〈人間合格〉もそれまでの日本のライマーにはなかった考え方というか。近かったのが宇多丸さんなんですかね。


――インタビューの続きは絶賛発売中のBUBKA5月号にて!


R-指定
大阪府出身のラッパー。DJ松永とCreepy Nutsとして活動中。高1から梅田サイファーに通い、バトルやライブ活動を開始。2012年からMCバトル全国大会UMB で3連覇を成し遂げ、「フリースタイルダンジョン」の2代目ラスボスに選ばれる。2020年11月にはCreepy Nuts初の日本武道館ワンマンライブを成し遂げた。