【BUBKA 1月号】平成の“次の時代”へと遺される幻の名勝負たち 『闘魂Vスペシャル』を覚えているか!?

平成の「次の時代」へと遺される“幻の名勝負”たち

その映像はテレビでも、ネット配信でも、CSでもなくマニアックなビデオ作品だけがカメラでキャッチしていた……。

闘魂Vの歴史の中で最大のヒット作となったのが『ムタvs長州』。ムタの試合は「出せば売れる」状態だったというが、そこに長州力というビッグネームが絡んだことで、2万本を超えるセールスに。通常の作品の約10倍というメガヒットとなった。ネットがない時代、ノーテレビマッチは『週プロ』や『ゴング』で詳報を読み、妄想を膨らませ、闘魂Vのリリースを待った。だからこそ雑誌もビデオも売れたのだ!


『闘魂Vスペシャル』(闘魂V)とは、1991年からリリースがスタートした新日本プロレスのオフィシャルビデオ。テレビ中継のない『ノーTVマッチ』で組まれた注目カードを中心に定期的にリリースされたが、当時はまだセルビデオという概念が世間一般にも広まっていない時代で、プロレスの試合ビデオは「1本60分で10000円」というのが相場。かなり高価な商品だったが、この闘魂Vは1本3800円という価格破壊を断行し、プロレスビデオを気軽に買える商品に変貌させた。

 ちょうど『ワールドプロレスリング』がゴールデンタイムから撤退し、夕方や深夜に枠を移し、放送時間も60分から30分へと縮小されていく時代。ただ、新日本プロレス自体は闘魂三銃士が充実期を迎え、ドームツアーを成功させるなど「平成黄金時代」を築きあげていた。テレビの放送枠と実際の興行人気の乖離。そのジレンマが闘魂Vというコンテンツを生み出し、ファンもイッキに飛びついた。

 そんな時代の側面を切り取り、掘り下げたムック『誰も知らなかった猪木と武藤闘魂Vスペシャル伝説』(メディアックス・刊)が出版された。全体の構成を担当したのは、本誌のアイドル記事でもおなじみのフリーライター・小島和宏氏。なぜ今、闘魂Vなのか? そこには〝誰も知らなかった〞意外な逸話がゴロゴロ転がっていた。


90年代の「意外史」

――今回、出版された『闘魂Vスペシャル伝説』ですけど、相当、マニアックですよね。

小島 いや、本当に。僕も最初にオファ―をいただいたときには「いや、面白いけど、こんなにマニアックすぎる本、売れないですよ」って断ったぐらいだから。

――あっ、小島さんの発案ではないんですか?

小島 うん。闘魂Vスペシャルの歴史で一冊、作れませんかね?という相談があって。その相談を受けているうちに「あれっ、これは面白いな」と思ってきて。ただ90年代にリアルタイムで新日本プロレスを見ていた世代にはめちゃくちゃ刺さるけど、それ以外の世代には、どんなにプロレスが好きでも「闘魂Vってなに?」って言われかねないテ―マ。でも、BUBKAでもよくやっているけど、UWFと時代的にはリンクしているんだよね。そして、取材を進めていったら、結局、UWFにたどり着いた。

――どういうことですか?

小島 結局、プロレスの試合ビデオを「売る」という発想は、新生UWFのビデオが売れたから出てきたんだよね。UWFのビデオに関しては、最初からガツガツ売ろうとしたというよりは、結果的に「売れちゃった」感じ。それこそ初期は一般流通もしていないし、直販と通販だけで売っていたら、どんどんファンが申し込んできた、と。なんか、そのあたりは都市伝説みたいになっちゃって「ビデオの売り上げがあったから、新生UWFはテレビ局からの放映権料が入らなくても経営が成り立った」みたいな話が定説になっている。せっかくの機会なので「で、実際はどれぐらい売れたんですか?」と当時のスタッフに確認して。


――記事の続きは絶賛発売中のBUBKA 1月号にて!