【BUBKA 2月号】中溝康隆(プロ野球死亡遊戯) 愛と幻想の原辰徳 第2回「タツノリポイントカード」

元ファンからコラム日本一に輝いた最強野球ライター

中溝康隆(プロ野球死亡遊戯)が書き綴る「2019年の若大将」

「お前さんのショートボブは小顔の人に似合う髪型だと思う。ロングに変えてくれ」

 合コンで出会ったおネエちゃんにいきなりこんな台詞を言う自信は俺にはない。だが、巨人の原監督は山口俊に対して、「お前さんの番号(42)は外国人に似合う番号だと思う。11番を背負ってくれ」なんつってお得意の"お前さん話芸″で説得。君とかあなたじゃなく、お前さん。″お前″なんだけど"さん″づけ。なんだかよく分からないけど、ぐっと距離が近くなるこの感じ。甥っ子の菅野智之に対しては「お前、それはね、智之しかいない」と19番から18番へ、ゲレーロにはメールで「私は強打の外国人は42、44、49が活躍するイメージがある」と伝え44番に。他にも多くの選手の背番号をシャッフルさせ、新しい巨人作りに邁進している。

 獲って獲って獲りまくる。バランスよりもインパクト。金満上等ストロングスタイル。まるで90年代の長嶋監督時代に戻ったかのような球界の悪役・巨人軍が復活だ。最近の巨人はアンチから嫌われる以前に、弱すぎて心配されていた。プロ野球でもプロレスでもヒールは弱くちゃ成立しない。憎らしいほど選手を掻き集める。まさに人間ブルドーザータツノリ。お前さんじゃなく、お丸さんこと丸佳浩には自身の現役時代の8番を与え、中島裕之、岩隈久志、炭谷銀仁朗と噂されていた大物選手の獲得に片っ端から成功。やはり80年代生まれの彼らにとって、読売ジャイアンツは良くも悪くも特別なチームなんだろう。一番若い89年生まれで千葉出身の丸でさえ、野球を始めた頃は松井・由伸・清原がバリバリの時代だったはずだ。テレビをつけたら毎晩地上波ゴールデンタイムで巨人戦を楽しめたジャイアンツ・アズ・ナンバーワン現象に憧れた最後の世代。西武からポスティングシステムでメジャー移籍する91年生まれの菊池雄星も、少年時代は月刊ジャイアンツを愛読、ファンクラブに入っていたこともカミングアウトしている。正直、古い。けど、古さとは熟女……じゃなくて伝統とも言い換えられる。野球界を取り巻く環境は変わっても、意外なことにいまだ安心の巨人ブランドは馬鹿にはできないのである。


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なかみぞ・やすたか(プロ野球死亡遊戯)
1979年埼玉県生まれ。大阪芸術大学映像学科卒。ライター兼デザイナー。2010年10月より開設したブログ『プロ野球死亡遊戯』は現役選手の間でも話題に。『文春野球コラムペナントレース2017』では巨人担当として初代日本一に輝いた。ベストコラム集『プロ野球死亡遊戯』(文春文庫)が好評発売中!