【BUBKA 4月号】中溝康隆(プロ野球死亡遊戯)愛と幻想の原辰徳 第4回「タツノリのYAZAWA化」

元ファンからコラム日本一に輝いた最強野球ライター

中溝康隆(プロ野球死亡遊戯)が書き綴る「2019年の若大将」

「嬉しいっす……。苦しかったすね……。どーもアリガトウございましたあっ!」

 故障から復帰した20試合ぶりのスタメンで、広島の"炎のストッパー″津田恒美から延長10回裏にサヨナラ安打を放ち、お立ち台に呼ばれた若大将は泣いていた。土曜の昼下がりに見るCS放送G+「ジャイアンツベストセレクション 原辰徳特集」。まだ屋根が白くキラキラ光る平成元年の89年8月7日の東京ドーム、目の前で4番クロマティが敬遠され、5番原勝負。いけっ意地をみせてくれタツノリ! よっしゃああああっ! なんつって当時小学生の俺はテレビの前でもらい泣き。爽やかな正義のベビーフェイスは少年たちのヒーローそのものだった。と思ったら、懐かしの映像を観た直後に平成31年のTwitterを開くと、宮崎キャンプ2日目にプロレスラーのザ・グレート・サスケのマスクを被り、ノリノリでポーズを取っちゃう60歳の原監督がいた。この30年間に何があったんだタツノリ……。まあ俺ももうすぐ40歳だ。お互い色々あったよな……。

 あの頃、少年たちはヒーロータツノリの応援歌「嵐を呼べ~レッツゴーレッツゴー~」なんて口ずさみながら草野球の打席に入ったものだが、今の監督タツノリも嵐を呼びまくって、長野や内海は吹き飛ばされちまったよ。巨人春季キャンプは、すべては4年ぶりに帰ってきた原監督の掌の上で転がされているかのような日々だった。

 なにせキャンプイン早々の2月3日にいきなり平成G史上最速の紅白戦。しかも1軍vs2軍のガチンコ対決。そう言えば、昨年の秋季キャンプ2日目にも先発オーダーや戦略を選手に考えさせる前代未聞の原プロデュースの紅白戦をやっていたが、今回も当然のように投手の自立を促させるために投球サインを自ら出させる。脳裏をよぎるのはそう"責任感"。2月12日付スポーツ報知には、アラサープレーヤー立岡宗一郎の「(紅白戦の)3日に合わせるよりも、もう2月1日のキャンプインに仕上げてきました」というインタビューが掲載されているが、ここ数年の停滞と2軍スタートで尻に火がついた立岡は2軍の「三番ライト」で先発出場すると2安打を放ち、その後の実戦でも自慢の俊足で結果を出し続け、見事13日からの1軍沖縄二次キャンプ行きチケットを逆転で勝ち取った。

「若手主体の試合で、しかもスコアボードとかに『1軍vs2軍』というようにあおるように書いてあったので、嫌でも意識させられていました」なんて笑うスピードスター。試合前に原監督はこんな台詞を叫んだと言う。

「1、2軍総取っ換えするから絶対勝てよっ」


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なかみぞ・やすたか(プロ野球死亡遊戯)
1979年埼玉県生まれ。大阪芸術大学映像学科卒。ライター兼デザイナー。2010年10月より開設したブログ『プロ野球死亡遊戯』は 100現役選手の間でも話題に。『文春野球コラムペナントレース2017』では巨人担当として初代日本一に輝いた。ベストコラム集『プロ野球死亡遊戯』(文春文庫)が好評発売中!