【BUBKA 5月号】中溝康隆(プロ野球死亡遊戯)愛と幻想の原辰徳 第5回「最後の聖戦が始まる」
元ファンからコラム日本一に輝いた最強野球ライター
中溝康隆(プロ野球死亡遊戯)が書き綴る「2019年の若大将」
今、巨人ファンは“活字タツノリ”で盛り上がっている。
かつて、“活字プロレス”と呼ばれるジャンルがあった。記事を受け取ったファンが想像力を駆使し、その試合結果や発言の断片を組み合わせ、裏の裏まで勝手に深読みして楽しむ謎解き文化だ。あの発言の真意は実はこうだとか、一寸先のハプニングを予想する。今の明るく楽しく健全なプロレス界では「活字プロレスは死んだ」と言われて久しい。けど、平成も終わるプロ野球界には“活字タツノリ”が復活した。
例えば、巨人屈指のイケメンキャッチャー小林誠司についての原辰徳コメントは興味深い。
「私が真剣に教えていますので、今年は打つと思います。守備は世界一と言っていいくらい素晴らしい。あとは250(打率2割5分)を目標に。今年、僕があれだけ一生懸命教えて200(同2割)くらいの打率であるならば、そのまま大阪に置いていこうかな、と思っています」(3月8日付スポーツ報知)
実はこの小林は記者の間でも「書くのが難しい選手」だったりする。なぜなら、後ろに熱狂的な女性ファンがついてるから。少しでもマイナスなことを書くと反感を買いネットで炎上しやすい。だから、コバちゃん記事は書き手の腕が問われるネタである。
……はずなのに、原監督は一切気を遣わず素知らぬ顔でぶっこんでくる。小林とバッテリーを組んだ菅野が好投しても「一概にそこを言ってしまうと、シーズンまで保証するようになるのはいかがなものかと思う」と浮かれなんよお前さん的なジャブを放つ。例によって、モラハラやパワハラなんて次元の低い話じゃない。これが良くも悪くも原辰徳ハラスメント、略して噂の“ハラハラ”話芸だ。
とにかく過去のタツノリ語録を振り返ってみると、マジもんのシュート発言連発でビビる。2009年、「本当にお前さんたちは、強い侍になった!」なんつってWBCで侍ジャパンを世界一に導いた原監督は、自軍に戻ると不調が続く内海哲也に対して、「“侍スピリット”はないのか。今のままなら“ニセ侍”だ」と鼓舞。将来のエース候補として期待する東野峻の不甲斐ない投球には「これだけ経験を積ませている“砂遊び”は卒業しなきゃいけない。同じような失敗が多すぎる」なんてチクリ。ちなみに当時の内海は26歳、東野は23歳の若手である。仮に今の新入社員に「この営業ニセ侍!」とか「デスクで砂遊びしてんなよコラ」とか説教したら一瞬で信頼を失う気がする。
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なかみぞ・やすたか(プロ野球死亡遊戯)
1979年埼玉県生まれ。大阪芸術大学映像学科卒。ライター兼デザイナー。2010年10月より開設したブログ『プロ野球死亡遊戯』は 現役選手の間でも話題に。『文春野球コラムペナントレース2017』では巨人担当として初代日本一に輝いた。ベストコラム集『プロ野球死亡遊戯』(文春文庫)が好評発売中!
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