【BUBKA 1月号】杉作J太郎 AKB48グループ版舞台『仁義なき戦い』あまりに正しく美しい青春の輝き
「途中三度視界がぼやけた」──観劇後にTwitterでつぶやかれ、ラジオでつぶさに語られた熱量たっぷりの賛辞。東映ヤクザ映画を愛し、過去には『仁義なき戦い 浪漫アルバム』(徳間書店)という研究本を刊行したこともある杉作J太郎に、編集部は電話取材を試みた。
東映ファン必見
東映ファンとして言えば再現度のたいへん高い舞台でしたね。ただごとではない。スケジュール的に僕は毎日ラジオの生放送があるので難しいかと思ってたんですが、僕の住む松山から福岡にJALの直行便が出てましたんでね。行ってよかったと思った。もし行かなかったらと思うとぞっとします。それぐらい東映ファン必見だった。そんな予感はたしかにあったんですけどね。
映画『仁義なき戦い』は実録ヤクザ映画ですが、反戦映画でもあるし青春映画でもある。原子爆弾が落とされた広島で若者たちが織りなす青春群像劇。深作(欣二=監督)さんの青春も笠原(和夫=脚本)さんの青春も重ねられている。第3作目の『仁義なき戦い代理戦争』のラスト、渡瀬恒彦さん演じる倉元猛が死んで新たな抗争が始まる時に「戦いが始まる時、まず失われるものは若者の命である」という有名なナレーションがありますけど、命が失われる場合もあれば、大人の社会で挫折してしまうこともある。いつの時代でも、社会っていうものは矛盾とか汚いものを含んで動いている。真っ直ぐな若者としては納得いかない。広能昌三という主人公は愚かなまでに真っ直ぐです。だから裏切られ、失望し、傷つく。
博多座の劇場パンフレットにしっかり記したのでできればそちらを読んでほしいのですが、映画では菅原文太さんをはじめとする出演者の実年齢がもう中年に差し掛かっていたんですね。だからちょっと見には青春映画ではない。いや、何度見ても青春映画には見えにくいんですね。それが今回、実際に若者である48グループの方々が演じることで、登場人物みんなの青春が報われたというか、成仏できたというか。若い魂が今、やっと再現されたというか。そういう意味で「横山由依さんは広能昌三の苦く悲しい青春をサルベージすることに成功した」んだと思います。実年齢の壁があって伝わりきらなかった青春を描くことに成功しただけでなく、彼女たちが演じたことで、儚さや物哀しさはアップされていますよね。横山さんの真っ直ぐな演技、それが本当に際立って良い物語になっていました。『週刊プレイボーイ』の対談で初めて横山さんにお会いした時、最初の数分間で予感できました。これはなにかとんでもないことが起きている、と。横山さんが広能のセリフを一言口にされたんですが、それを聞いた瞬間に「えっ?」と思うぐらいに広能昌三でした。びっくりしましたね。横山さんっていわゆる「お上手」の言えない、スッと本心が言える方ですよね。それで年長の方にも年下の方にも信頼されていると思うんですけど、そういう真っ直ぐなところがまさに原作の飯干晃一さんが書かれた広能昌三です。広能のある種チャーミングなまでの愚直さが震えるくらいに再現されている。
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杉作J太郎
1961年生まれ、愛媛県出身。男の墓場プロダクション代表。漫画家、タレント、映画監督などマルチな才能を発揮。南海放送ラジオにて毎日毎晩放送のラジオ『痛快!杉作J太郎のどっきりナイト7』、南海放送で毎週日曜放送の『もぎたてテレビ』に出演中。
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