【BUBKA5月号】吉田豪のBUBKA流スーパー列伝 レジェンド漫画家編 vol.32『あずみ』小山ゆう

『がんばれ元気』『お~い!竜馬』『あずみ』など数々のヒット作を手がけ、今は時代劇漫画『颯汰の国』を連載中の小山ゆう。誰とも話さなかったという高校生時代、ミュージシャン志望だった青年時代、とんでもない才能と出会ったさいとう・プロダクション時代など、濃密な漫画家人生をプロインタビュアー吉田豪がじっくりと聞いた!

主人公は運動神経抜群で

戦ったら強いのが決まり

――最近の作品だと『スペリオール』連載のボクシング漫画『雄飛』が大好きでした!

小山 自分でも相当好きなんですよ。雑誌でも人気あったんだけど、単行本の売れ行きがあんまりよくなかったんですよね、なぜか。

――無茶苦茶いい作品ですよ!

小山 なんとなくわかるけどね、なぜ単行本が売れなかったか。やっぱりスッキリさせる回が少なくて。一気に読めばスッキリするんだけど、なんかこうずっと抑えて抑えて。

――最後に巨悪を倒してスッキリさせる。

小山 同じ復讐ものでも、たとえば『子連れ狼』は誰かを斬ればスッキリするじゃん。『あずみ』もいろいろやられてもあずみが斬ればスッキリするんですよ。人に言われたことがあるんです、「早くスッキリさせてくれよ!」って。そういうことかなと思ってね。

――適当に中ボスとか倒したりしながらこまめにスッキリさせないといけないんですね。

小山 そういうことなんだろうね。でも、個人的にはすごい好きな作品なんですよ。

――無茶苦茶いいですよ! それに、あんなに悪役らしい悪役ってまずいないですよ!

小山 ハハハハハハ! 峻堂(巌、主人公・大垣雄飛の姉と母を絞め殺した、とことん悪いヤクザ)いいよねえ。実写で役者にすごい特殊メイクでやってほしいんですけど。

――顔も悪いし人間も悪いし、あんなにわかりやすい悪って最近のエンターテインメント作品でまずないなと思って。最近、悪には事情があるものとか、正義も悪も一概には言えないみたいになっている世の中で、こんなに明確な悪が存在するのがすごいよなって。

小山 ハハハハハハ! そうですか(笑)。

――そして先生の作品の共通点は、主人公が基本まっすぐないいヤツが多いというか。

小山 それはよく言われますけど、俺のなかで主人公は、運動神経抜群で闘ったら強い、これを外したことがないですね。要するに、そういうものに僕があこがれてるからね。

――そこはコンプレックスが反映された?

小山 そうでしょうね。強くありたかった! 強ければ生き方変わるのになって思います。

――もともと勉強はできた人なんですよね。

小山 そうなんですけどね。高校で挫折があったからこっちに来ました。だって16歳から18歳の3年間ですからね。当時オリンピックがあったんだけど相当印象薄いっていうのは、それだけ心を閉ざしてたんだろうね。

――高校3年間の記憶もほとんどないし。

小山 そうですね、高校の記憶ないです。

――要は成長が遅かったんですよね。それで、しゃべるのにも歩くのにも問題が出て。

小山 どう見たってうまく変声期を越えることができなかったのと、急に脚が伸びたから骨が対応できなかったっていうことでしかないですよね。

――それが3年間も尾を引いちゃった。

小山 うん、声が出なくなって。出なさ加減を説明しにくいんですけど、全体的な音域が狭まって、ちょうどしゃべるあたりが出ないんですよ。気持ち悪い低音が少し出て、息と一緒にささやくように話すとちょっと出て。


――インタビュ―の続きは絶賛発売中のBUBKA5月号にて!


こやま・ゆう
1948年2月20日、静岡県出身。1968年にさいとう・プロダクションに入社して漫画の世界に入る。1973年に『週刊少年サンデー』にて『おれは直角』で漫画家デビュー。以降、第一線で活躍し続ける。『がんばれ元気』『おれは直角』『お~い!竜馬』『あずみ』など、他メディアで展開された作品も多数。『あずみ』では第1回文化庁メディア芸術祭漫画部門優秀賞を受賞している。