【BUBKA6月号】新型コロナウイルスで揺らぐエンタメ業界最前線 映画ライター 滝口明

全世界での感染者238万人超、死者16万人超。

日本での感染者11,119人、死者186人(2020年4月21日現在)。

とても言葉にならない、この記録的な数字は新型コロナウイルスによるものだ。日々増えていく数字と向き合うだけで湧いてくるのは、無機質な恐怖のみ。

では、映像や音声を記録し、言葉にならないことを言葉にするテレビやラジオ、映画といったエンターテインメントは、このコロナ禍を我々にどう伝えてきたのか?

そして、今後どのように伝えようと試みるのか?

映画館の危機

 今回の新型コロナウイルスが日本の映画業界に与えた影響は、文字通り想像を絶するものがありました。

 例えば、60本を超える新作映画の相次ぐ公開延期や、週末の休館要請による客足の減少など、まさか映画業界にここまでの影響が及ぶとは誰も予想しなかったに違いありません。中でも全国の映画館が受けた経済的ダメージは大きく、その窮状を訴える劇場経営者の声は、SNSやネット上で大きな話題になりました。

 思えばその発端は、2月28日に発表された、『映画ドラえもん のび太の新恐竜』公開延期のニュースでした。

 この時点では、全国で一斉休校になった子供たちの感染を避けるためとして納得する声も多く、あくまでも春休み向けのアニメ映画への特例措置、一般的にはそんな認識だったのです。

 ところが3月に入り、ディズニー/ピクサーの『2分の1の魔法』やディズニーの実写版『ムーラン』、更に『ドクター・ドリトル』や『ソニック・ザ・ムービー』などのファミリー向け話題作が公開延期されるに至って、次第に人々も事態の重大さに気付くことになります。

 更に、今度は海外での新型コロナ感染が深刻化。アメリカでの映画館休館に伴う新作映画の公開延期や、制作中の作品の撮影中断により、洋画の話題作の日本公開スケジュールが白紙に戻るという、異常事態に突入していきました。

 例えば、『007』シリーズの新作が4月公開から11月に延期、『ワイルド・スピード』シリーズの続編にいたっては、5月公開予定が翌年に延期される始末。これ以外にも『トップガン』や『ゴーストバスターズ』の続編の日本公開日が未定になるなど、今後の上映予定が全く読めない状況が現在も続いているのです。

 中でも一番の稼ぎ頭であるアメコミ映画への影響は大きく、『ブラック・ウィドウ』や『ワンダーウーマン1984』の公開が延期され、すでに発表されていたMCUのフェイズ4作品の公開スケジュールも、大幅に変更を余儀なくされてしまいました。

 とは言え、この時点ではレイトショーの中止や座席を一つ空けてチケット販売するなどTOHOシネマズでは延期された作品の穴埋めとして、『ジョーズ』や『ゴッドファーザー』に『E.T.』という、まるで名画座のようなラインナップが組まれ、映画ファンの間でも大きな話題を呼ぶことになりました。

 ところが、東京都の要請に応じて首都圏の映画館が休館した3月28日と29日の興行成績の低さが、4月に入って洋画だけでなく、邦画話題作の公開延期に拍車をかけることになってしまったのです。


――インタビュ―の続きは絶賛発売中のBUBKA6月号にて!


滝口明
映画ライターにしてブルース・リー研究家。映画サイト「シネマズPLUS」「動画配信サーチ」で連載中。映画コミカライズ研究・日本オリジナルの映画主題歌研究が専門。狂ったスポーツ漫画や、昭和30年代の日本独自のヒーロー漫画、トラウマ映画新聞広告の収集など、その膨大な資料と抜群の行動力には定評がある。